2021年12月、Lizedでは製品設計の意図や革の仕上げについて、Lized独自の視点で解説した冊子を制作しました。
この冊子は単なる入門的な「How-to」だけではなく、実践者の経験に基づいた「Know-how」的な位置づけも目指しています。
専門用語を避けることなく、ニュアンスを込めて書き綴った内容は、革の素材と真正面から向き合い、作り手としての理解と判断力を高めるための一冊です。
■ How-to以上、Know-how未満ではなく、実体験に根ざしたリアルな知識を提供
▽ 単純な手順書では伝えきれない「意図」を重視
■ 専門用語をあえて使う理由
▽ 初心者向けに言葉を丸くすると、本質がぼやけてしまう
▽ 専門用語に触れながら「感覚」や「普通」を育てていく方が、深い理解につながる
■ 「革の仕上げ」とは塗料だけの話ではない
▽ 良い塗料=良い仕上げ、とは限らない
▽ 重要なのは「工程」と「意図」
▽ 経験と設計思想が仕上げを支える
■ 個々の作業環境・目的に合わせた応用力が重要
▽ 一律な正解や「これがベスト」とされる情報に振り回されないこと
▽ 「普通」や「定番」を疑い、自分なりの選択肢を持つ
■ "知ってる" ことが、"つくれる" ことにつながる
▽ 革の特性を理解してこそが、ものづくりの土台となる
▽ 違いを知ることで、「意図」が生まれる
【電子版】『How-to/Know-how 革の仕上げについて』は、2021年12月に販売した冊子に加筆を加え、電子版として公開しています。さらに、あれから4年。積み重ねた経験をもとにした続編の制作も進行中です。
染料
■ レンカラー 全10色
成分:染料、有機溶剤推奨希釈剤:ディルエントDR・ラッカーシンナーDR・水
日光堅牢度に優れ、タンナーでの実績も豊富な染料です。
水・アルコール・シンナーなど、さまざまな溶媒に対応する両溶性で、幅広い仕上げに適応可能です。
■ ダイカラー 全10色
成分:染料、有機溶剤推奨希釈剤:ディルエントDR・ラッカーシンナーDR
染料自体の特性はレンカラーと同様で、タンナーでの実績も豊富な染料です。
溶剤性のため水には溶けませんが、独特で印象的な発色が特長です。
■ アクアカラースーパーブラック
成分:染料、水、有機溶剤推奨希釈剤:水
漆黒から、水での希釈によってグレーまで濃淡の調整が可能です。
他の染料との混色には対応しておらず、単独でご使用ください。
■ クラフターズインク 全10色
成分:染料、水、有機溶剤、酸
単独使用に特化した水溶性染料です。従来のLized染料のように他の製品と混合することはできませんが、鮮やかな発色が魅力です。また、市販品に見られるような酸っぱい臭いを抑えた設計となっており、より快適にご使用いただけます。
染料について
Lizedの染料レンカラー・ダイカラーには、含金染料(金属錯塩染料)を採用しています。これは、日光堅牢度に優れた染料であり、皮革の量産工場であるタンナーにおける仕上げ工程でも、信頼性の高い染料として広く使用されています。
酸性染料(アニオン)や塩基性染料(カチオン)も染色工程の選択肢にはなりますが、バインダー・顔料・トップコートなどに配合して使用することを考えると、含金染料のもつ相溶性の高さが大きな利点となります。Lized製品に置き換えて説明すると、ウレタントップ(バインダー)やエッジカバー各色(顔料)、NCラッカートップ(ラッカーコート)との相溶性の観点から、実績のある含金染料=レンカラー・ダイカラーを採用しています。
染料と希釈剤のみで染色する場合は、酸性染料や塩基性染料の使用も可能ですが、日光堅牢度・色落ち防止・経年による色移りや退色のリスクについては事前に把握しておく必要があります。
染料はさまざまな業界で使われていますが、それぞれの用途で何が違うのでしょうか?色相や濃度の違いもありますが、最も大きな違いは溶媒にあります。対象素材に合わせて、最適な溶媒が選ばれるのです。たとえば、紙に使うボールペンであれば、乾燥が早くにじみにくい溶媒が適しています。一方、革の場合は、革表面の凹凸に対してムラなく染まるような溶媒が求められます。さらに、Lizedが特に重視しているポイントがあります。それは、染料同士を混ぜたときに色が濁らず、きれいに“足し算”ができることです。
革の仕上げにおける染料の役割は、発色にあると考えています。Lizedの染料には、レザークラフター向けに限らず、他社製品と同系統の色相を持つものもありますが、濃度や使用する溶媒の設計意図が異なるため、同じ色にはなりません。見た目の色が似ていても、仕上がりや色の深みには違いが出てきます。
お問い合わせで「各染料の違い」について質問があります。塗料の設計からですと色相と対応する溶媒の違いです。手染めなど染料だけで染色に限る場合は希釈剤をディルエントDRとすれば、レンカラー・ダイカラーから好きな色相を選んでください。ウレタントップやエッジカバーに配合するのであればレンカラーとなります。またメタリックペーストにも配合できるレンカラーは汎用性が高い染料です。
お問い合わせの多い「各染料の違い」についてご説明します。染料の設計視点から見ると、主な違いは色相のバリエーションと対応する溶媒です。手染めなど、染料単体での染色を行う場合には、希釈剤としてディルエントDRをご使用いただくことを前提に、レンカラーまたはダイカラーからお好みの色相をお選びください。一方で、ウレタントップやエッジカバー、メタリックペーストといった他製品に染料を配合する場合は、溶媒適性や相溶性の観点から、レンカラーのご使用を推奨しています。特にレンカラーは、幅広い製品と組み合わせが可能な汎用性の高い染料です。ダイカラーは特にオーシャンブルーとローズピンクはレンカラーでは表現できない色相となります。アクアカラースーパーブラックとクラフターズインクは、含金染料では表現できない独特の発色が特長です。これらは他製品との配合を前提としない設計のため、単独使用または推奨する希釈剤を用いた配合に限定されます。
水溶性顔料
■ ペイントカラー 全11色
成分:顔料、アクリル樹脂、ミルクカゼイン、アンモニア、水
ペイントカラーの単独使用は塗膜割れ及び色落ちの原因となりますので、必ずエッジカバーやウレタントップに配合して使用ください。
■ エッジカバー 全39色
成分:顔料、ウレタン樹脂、水
革表面の銀面とコバの着色剤として使用できます。
単独使用で塗膜割れと色落ちのリスクを抑えた設計となっています。
より高い耐久性を求める場合はトップコートを推奨しています。
■ ルミナスカラー 全7色
成分:顔料、ウレタン樹脂、水
エッジカバー各色とも配合できます。エッジカバー同様に革表面の銀面とコバの着色剤として使用できます。
単独使用で塗膜割れと色落ちのリスクを抑えた設計となっています。
より高い耐久性を求める場合はトップコートを推奨しています。
下地の色に左右されるので白下地やタンローをオススメしています。
■ NEOエッジカバー 全19色
成分:顔料、ウレタン樹脂、シリカ、水
NEOエッジカバーはコバに特化した設計をしていて、より強固な膜を形成します。
またウレタントップマットコンクを配合しており、ハイブランド革製品に見られる落ち着いた艶感も特徴です。
水性顔料について
皮革用の顔料に求められるのは、柔軟性と耐摩耗性、そして革本来の風合いを損なうことなく美しく着色できる性能です。染料だけでは表現しきれない均一性や仕上がり感を補うことが、顔料の重要な役割となっています。ただし、皮革用の顔料は、絵の具やクレヨンのような強い被覆力を持つわけではありません。あくまで革の素材感を活かしつつ、表面の色調を整えるために使われるものです。
革の仕上げにおいて、白い下地から顔料だけで黒に仕上げることは、実際にはほとんど行われていません。通常はまず、タイコ染色によって革全体を黒に近い色調に染め上げ、その後、スプレー染色によってさらに色を整えたうえで、最終的に顔料を用いて仕上げを行います。これは、革という素材の特性を考慮した、段階的かつ繊細な工程です。また、現在の市場においては、自動車や家具といった一部の用途を除き、顔料感――すなわち塗装感の強い仕上がりはあまり高く評価されていません。革らしい自然な風合いと質感が求められているため、厚く塗り固められたような表面処理は、かえって素材の魅力を損なうと受け取られることが多いのです。それでも顔料が使用される理由は明確です。染料のみでは実現が難しい均一な発色を可能にし、加えて、染料仕上げに付きまとう退色のリスクを抑える効果もあります。顔料を併用することで、色ムラを防ぎ、仕上げの安定性や耐久性を高めることができるのです。
革の仕上げでは着色剤の選択肢として染料と顔料があります。皮革量産工場であるタンナーではどちらかだけで仕上げを完結するコトは珍しいことです。染料の発色と顔料の均一性と耐久性を考慮して混ぜ合わせたり、工程に組み合わせて塗装をしています。顔料を配合する場合は均一にする為にスプレー塗装を推奨しています。顔料=塗装感とイメージする方もいると思いますが、染料を混ぜ合わせたり、スプレー塗装によって塗装感の少ない革の凹凸を生かした仕上げが可能です。染料を補う選択肢として顔料を活用するのが革らしい仕上げをする重要なポイントです。
ペイントカラーのように顔料濃度が高い製品は、単独で使用すると塗膜の割れや色落ちが必ずと言っていいほど発生します。そうした課題に対応するため、ペイントカラーにウレタン樹脂を配合し、柔軟性と耐久性を高めたのがエッジカバーです。エッジカバーはその名の通りコバ用として開発されていますが、革表面の銀面にも使用可能な汎用性を備えています。革の可動性に追従する柔軟性と、耐摩擦性などの耐久性の両立を実現しており、仕上がりの質と安定性に優れた顔料です。粘度の違いにより、通常タイプと低粘度タイプの2種類をご用意しています。コバに厚みを持たせたい場合には、他社製品には見られない高粘度設計の通常タイプがおすすめです。一方で、スプレー塗装を前提とした用途には、低粘度タイプが適しています。また、ルミナスカラーも低粘度タイプと同様の粘度となっており、同じ使用感でお使いいただけます。
顔料の最大の特徴のひとつに、染料では再現が難しい白をはじめとする淡い色調を表現できる点があります。特に、エッジカバーのホワイトをベースに、レンカラーやルミナスカラーを配合することで、オリジナルのパステルカラーやアースカラーを自在に調整することが可能です。こうした調色によって、柔らかくやさしい色合いや、自然で落ち着いた風合いを革の表現に取り入れることができ、製品の個性やデザインの幅をさらに広げることができます。NEOエッジカバーは製品説明の通り、コバに特化した艶消しマットで高濃度の設計となっています。ハイブランド革製品に見られる落ち着いた艶感も特徴です。
顔料は性質上、保管中に分離や沈殿が生じることがあります。そのため、ご使用前には容器をよく振って顔料をしっかりと分散させてからお使いください。特に気温が低い時期には顔料が混ざりにくくなることがありますが、その場合は容器ごと湯煎し、40℃程度に温めていただくと、分散性が改善されます。なお、塗料自体が50℃以上になると、有効成分が破壊されて性能が著しく低下する恐れがあります。加温する際は温度が上がりすぎないよう、十分ご注意ください。
水溶性トップコート
■ ウレタントップ 全4種
成分:ウレタン樹脂、水、(シリカ)
高耐久ウレタン樹脂を主成分としたトップコートです。
ハードな塗膜を形成するグロスH、Hよりも柔らかな塗膜を形成するグロスMS、艶消しマット、グロスHとマットを配合した半艶スタンダードの4種類があります。
■ ウレタントップ 全4種
成分:ウレタン樹脂、水、(シリカ)
ウレタントップの高濃度タイプとなります。コンク1に対して水で通常ウレタントップと同様の濃度となります。
■ カゼイントップ
成分:ウレタン樹脂、ミルクカゼイン、水、アンモニア
ウレタントップHにミルクカゼインを配合したトップコートです。
ミルクカゼイン特有の磨き艶を得られます。
■ 水溶性架橋剤
成分:反応型架橋剤
Lizedウレタン樹脂系の製品類に手間で斬る水溶性架橋剤です。
耐水性。耐溶剤性・密着性等の性能を向上させることができます。
全体量の2%ほどの添加で効果を発揮します。
水溶性トップコートについて
皮革業界においてバインダーとは、造膜性を持つ水溶性の樹脂溶液を指します。主にベースコートに使用され、顔料や他の成分を革の表面に定着させる役割を担っています。ベースコートで多く使用されるバインダーは、コストパフォーマンスの観点からアクリル系やブタジエン系のものが主流です。一方で、トップコートには、柔軟性と耐摩耗性に優れたウレタン系バインダーが選ばれる傾向があります。さらに高い耐久性が求められる場合には、ベースコートの段階からウレタン系バインダーを使用することもあります。特に自動車向けのような厳しい品質基準を満たす仕上げでは、革の全体仕上げをウレタン系バインダーで構成し、高い耐摩耗性などの耐久性を実現することが可能です。
薄い塗膜で一定の強度が得られるのがウレタン系の特性であり、その特性を活かしたのがウレタントップです。下地からの染色の際に、塗装感を感じさせないほどに薄く塗り重ねることで革の浸透をある程度止められます。革の汚れの1つとして浸透を止められれば防汚効果を得られるのです。ウレタントップはそのような特性からヌメ革の生成りや仕上げ革であっても汚れが目立つ場合に効果を発揮します。
ウレタン系バインダーの特長は、非常に薄い塗膜でも十分な強度が得られる点にあります。この特性を活かした製品がウレタントップです。ウレタントップは、革の下地から染色を行う際に、塗装感を感じさせないほど薄く塗り重ねることで、革への染料や汚れの浸透をある程度防ぐことができます。この浸透を防ぐ性質こそが、防汚効果の鍵となります。そのためウレタントップは、ナチュラルな風合いが魅力のヌメ革の生成りや、仕上げ革などで、汚れが目立ちやすい場合に特に有効です。
ウレタントップ各種、カゼイントップ、エッジカバー各種には水溶性架橋剤を配合することでより強靭な塗膜を形成します。
艶消しマットタイプにはシリカを配合しており、シリカ成分が沈殿している場合があります。分離や沈殿が起こりますので使用前に良く振って分散させてください。特に気温が低い時期には顔料が混ざりにくくなることがありますが、その場合は容器ごと湯煎し、40℃程度に温めていただくと、分散性が改善されます。なお、塗料自体が50℃以上になると、有効成分が破壊されて性能が著しく低下する恐れがあります。加温する際は温度が上がりすぎないよう、十分ご注意ください。艶消しマット効果に問題が無ければ、容器を軽く振る程度でシリカの沈殿が残っていても耐久性には問題はありません。
溶剤性トップコート
■ NCラッカートップ グロス / マット
成分:硝化綿、可塑剤、有機溶剤、(シリカ)
硝化綿ニトロセルロースは、優れた耐摩耗性を持つことが特長で、革製品に使用すると使い込むほどに自然な磨き艶が生まれ、革本来の風合いが引き立ちます。
本製品は単独での使用が可能な設計となっていますが、希釈が必要な場合には、必ずラッカーシンナーDRをご使用ください。他の溶剤を使用すると、性能に影響を及ぼす恐れがあります。
■ NCラッカーピグメント 全9色
成分:顔料、硝化綿、可塑剤、有機溶剤
NCラッカーピグメントは、NCラッカートップ専用に開発された顔料で、発色の良さを重視した設計となっています。
各色のNCラッカーピグメントは相互に混合が可能であり、さらにレンカラーやダイカラーとの混合も対応しています。
これにより、目的に応じた幅広い色表現が可能となります。
■ NCラッカーワックス
成分:顔料、レシチン、可塑剤、有機溶剤
溶剤希釈タイプの感触剤でオイルレザーのようなヌメリ感が得られます。
ラッカーシンナーと希釈或いはNCラッカートップに配合します。添加量の目安は全体量の5%ほどで効果を発揮します。
■ NCラッカーシリコン
成分:シリコン
溶剤希釈タイプの感触剤で革特有のスベリ考えられ、密着試験のテープ粘着に対応しています。
ラッカーシンナーと希釈或いはNCラッカートップに配合します。添加量の目安は全体量の5%ほどで効果を発揮します。
■ CABラッカートップ グロス / マット
成分:CAB樹脂、可塑剤、有機溶剤、(シリカ)
CAB樹脂をベースとしたLized独自の可塑剤を配合した溶剤性の無黄変タイプのトップコートです。
塩化ビニル樹脂と接触した際などで革表面がベトベトした可塑剤溶剤性の移行状態を改善することができます。
単独使用が可能な設計となりますが、希釈する場合はラッカーシンナーDRを推奨しています。
溶剤性トップコートについて
流通している仕上げ革や革製品の大半が溶剤性のトップコートが施されてます。溶剤性トップコートの特長は独特の質感があり、水溶性トップコートでは再現性できない艶感と感触が得られます。他業種のラッカーと言えばウレタンとアクリルがありますが、皮革業界ではエナメル仕上げを除いて通常仕上げでは硝化綿が主流となっています、粘度によって強度など特性が異なる硝化綿と可塑剤の組み合わせによって各メーカーで様々な種類があります。
溶剤性トップコートは、エッジカバーやウレタントップなどの水溶性の塗膜の後にスプレー塗装を前提としています。水溶性トップコートの後に質感向上の為に塗装することも可能です。下地に直接スプレー塗装を行った場合、密着不良や塗膜の剥がれが発生する恐れがあるため、必ず水溶性塗膜の後に塗装をしてください。
溶剤性トップコートの特長は、塗膜の高い硬度と熱軟化性にあります。一方で、皮革素材に求められるような柔軟性は備えていません。そのため、溶剤性トップコートを塗布する前の段階で、すでに十分な耐久性が確保されている必要があります。また、溶剤性トップコートは水溶性トップコートと比較して塗膜が硬く、ドライで滑りやすい質感を持つため、耐摩耗性に優れているのが特長です。さらに、可塑剤を配合することで熱軟化性が高まり、磨き加工によって美しい艶が得られやすくなります。
Lizedでは主成分である硝化綿ニトロセルロース(NitroCellulose)の頭文字からNCラッカーと称しています。このNCラッカーは、艶感や感触にこだわった特別な配合となっています。着色剤としては、NCラッカーピグメントや染料レンカラー・ダイカラーを使用でき、また、感触を調整するためにワックスやシリコンを配合することも可能です。
有機溶剤
■ ディルエント DR
成分:有機溶剤
染料レンカラー・ダイカラーの専用希釈剤です。
ワークショップでの基本的な配合比率は、染料1に対してディルエント1となります。
■ ラッカーシンナー DR
成分:有機溶剤
NCラッカートップ・CABラッカートップの専用希釈剤です。
染料の希釈剤としても使用できますが、ディルエント DRよりも乾燥が速くムラが出やすい傾向があります。吸い込みの少ないクロム下地などには向いています。
■ リムーバー C
成分:有機溶剤
皮革の塗膜に対して高い溶解力を持ち、揮発性が高いため、リムーバー処理に適した配合となっています。
効果が強い場合には水希釈により調整がすることが可能です。
スプレーやエアブラシの洗浄用としても適しています。
有機溶剤について
世の中にはさまざまな種類のラッカーシンナーが存在します。シンナーとは、有機溶剤の混合物を指す通称であり、その成分は製品ごとに異なります。一般的に安価なシンナーは、コストを抑えるために安価な有機溶剤が使用されており、それには相応の理由があります。一方で、皮革用ラッカーシンナーは、他業種向けの製品と比較して高価な部類に入ります。これは、主成分である硝化綿ニトロセルロースをしっかりと溶解させるためには、高コストな有機溶剤が必要とされるためです。そのため、他業種向けの安価なシンナーを皮革用として使用すると、艶が曇る、塗装面がザラつく、溶解不足が起こるといった品質上の問題が発生する可能性があります。さらに、スプレーガンの詰まりなどのトラブルにつながることもありますので、用途に適した専用シンナーの使用を推奨します。
カテゴリーとしてはディルエント DRとリムーバー Cは、いずれも有機溶剤の混合物であるシンナーに分類されますが、Lizedでは用途ごとに合わせて製品名を設定しています。ディルエント DRは、Lized染料であるレンカラー・ダイカラーの専用希釈剤です。希釈剤は単に染料を薄めるだけでなく、その性能を最大限に引き出すために設計された配合となっています。たとえば、発色や混色時の濁りを防ぎ、色本来の鮮やかさが損なわれないように設計されています。
リムーバー Cは、塗膜の除去に適した両溶性の有機溶剤を配合しています。通常の塗膜であれば、単独使用で十分に効果を発揮しますが、もしリムーバー Cを使用しても塗膜が剥がれない場合は、反応型などの強固な塗膜が形成されている可能性があり、再塗装は困難と判断できます。一方で、塗膜が必要以上に除去される、あるいは効果が強すぎると感じる場合は、水で希釈することで溶解力を調整することが可能です。塗膜の状態に応じて、適切な濃度でご使用ください。
ラッカーシンナー DR は、NCラッカートップおよびCABラッカートップ専用の希釈剤です。それぞれの主成分である樹脂に対して、高い溶解力を発揮するよう設計されています。
有機溶剤は化学構造によって炭化水素・アルコール・ケトン・エステル・エーテルなどに分類され、これらの分類に含まれる溶剤の種類は非常に多く、数百種類にのぼります。Lizedでは、約30種類の有機溶剤を目的に応じて選定・配合しています。配合比率を調整することで乾燥スピードや浸透性のバランスを最適化しています。また、コスト面まなどのバランスを考慮したうえで製品化を行っており、用途ごとに最適な性能を発揮するよう設計されています。
シンナーとは、対象となる塗料を希釈し、その性能を十分に発揮させるために各メーカーの意図や技術が反映された有機溶剤の混合物です。単なる希釈剤ではなく、塗料との相性や乾燥特性、仕上がりの品質を左右する重要な役割を担っています。
問い合わせで「オススメの溶剤を教えてください」という質問がありますが、溶剤は有機溶剤を指しますので、塗料や薬品という意味で溶剤という言葉を使うのは、本来の意味としては誤りとなります。
コバ処理
■ エッジカバー シーラー
成分:ウレタン樹脂、水
ルーズなコバ面の素地調整に適してます。
浸透性と密着性を重視した設計になります。
■ エッジカバー 通常粘度 / 低粘度 グロス / マット
成分:ウレタン樹脂、水
柔軟性と耐久性に長けたウレタン樹脂を配合しています。
コバ処理の際の艶調整や床面処理に適しています。
■ グレージングトップ
成分:ウレタン樹脂、水、ミルクカゼイン、アンモニア水
ミルクカゼインと耐摩耗性及び密着性に長けたウレタン樹脂を配合しています。
ミルクカゼイン特有の磨き艶が得られ、耐溶剤性に長けた塗膜を形成します。
■ ポリッシングワックス
成分:植物性ワックス、水、界面活性剤
植物性ワックスを乳化させたワックスエマルジョンです。
特有の粘り気により、繊維の奥までしっかりと浸透し、磨き上げることでコバ面を滑らかに整えます。
従来の樹脂系コーティングとは異なり、ワックス特有の自然な艶が得られるのが特長です。
コバ処理について
コバとは木の端と書き、革の裁断面や端部分を指します。これはLizedが得意とするタンナーの仕上げ工程には含まれず、主に革製品を作る方々が担う工程です。コバは、耐久性を高めると同時に、磨くことで製品としての完成度を高める重要な要素です。そして、革の種類が多様であるのと同様に、コバの仕上げ方にも多くのバリエーションがあります。Lizedでは、仕上がりのイメージに応じて最適な選択ができるよう、さまざまなタイプのコバ仕上げ剤を製品化しています。
顔料系の塗膜でコバを仕上げる場合には、ウレタン樹脂を主成分とした各種エッジカバー各種が適しています。特に、クロム鞣し革などコバがルーズになりやすい場合には、事前にエッジカバーシーラーを使うことで、吸い込みを均一にし、塗膜の密着性を高めることができます。また、エッジカバー各種には高耐久性のウレタン樹脂を配合しているため、経年による塗膜の割れや剥がれといったトラブルのリスクも大幅に軽減されます。
グレージングトップはタンナーの工程であるグレージング仕上げに採用されているミルクカゼインとウレタン樹脂を配合しています。塗装後に感想を経て帆布などで磨くことで独特の艶感が得られます。ミルクカゼインの耐摩耗性とウレタン樹脂の耐久性を兼ね揃えています。
ポリッシングワックスは植物蝋をエマルジョン化しています。塗装後にベタベタとした指先が引っ掛かる感触となりますが、帆布などで磨くことで蝋がコバ繊維を寝かし付けて蝋特有の艶感が得られます。
ポリッシングワックスの開発にあたって重視したのは、「整えて、保つ」というコンセプトです。コバの仕上げでは、ルーズな繊維をしっかりと寝かせることが重要です。これは、革製品として使用される中で、摩擦や負荷によって繊維が再び立ち上がらないようにするためです。ポリッシングワックスは、磨きによって美しい艶を引き出すと同時に、長くその状態を保てるよう、耐久性にもこだわってラインナップを整えました。
これらの製品類はペーパー掛けや熱コテなどの工程を組み合わせて使用できます。
オイル
■ プラントオイル
成分:植物油、界面活性剤
植物油に界面活性剤を配合しています。
あらかじめ下地にプラントオイルを含浸させることで、Lized染料による着色がスムーズになり、染まりムラも軽減されます。
自然な艶が出やすく、同時に防汚性の向上といった効果も得られます。
■ アニマオイル
成分:動物油
ニートフットオイル100%の動物性オイルです。
高い浸透性を持ち、革の繊維内部までしっかりと馴染みやすいのが特長です。
革の油分を補い柔軟性を得られます。
■ アニマオイル+W
成分:動物油、界面活性剤、水
ニートフットオイルの水溶性エマルジョンタイプです。
エマルジョン化の効果により革への浸透と革表面の潤いを同時に得られます。
銀面への塗装では保革効果、床面からの塗装で柔軟性が得られます。
オイルについて
革には本来、適度な水分と油分が含まれており、そのバランスが保たれることで柔軟性や耐久性が維持されています。しかし、このバランスが崩れると、銀面のひび割れや、革自体が脆くなって裂けてしまうといった劣化が起こります。こうしたトラブルを防ぐためには、お手入れの観点から保革を意識することが重要であり、特に浸透性に優れた動物性オイルの使用が効果的です。
たしかに「革は動物由来だから、オイルも動物性が適している」という考え方は一見理にかなっているように思えますが、それだけで判断するのは安易すぎると言えるでしょう。動物性オイルは、革によく馴染み、繊維をほぐす効果が高いという点で非常に有効な選択肢のひとつです。しかし一方で、浸透性が非常に高いため、革の内部に深く入り込みやすく、塗布時に革表面の水分や油分まで一緒に引き込んでしまう可能性もあります。その結果、色が濃く変化したり、場合によっては革の状態を不安定にすることも考えられます。
オイルは原料から動物・植物・鉱物に区分されます。動物性オイルは動物の数ほど種類がありますが、塗料として採用できるのは食用として流通している牛・豚・羊・馬・魚油などに限られています。植物は種子や果肉から抽出しており、そして食用に限らず潤滑油などの工業用でして広く活用されているので、数多くの種類があります。動物と植物以外は鉱物となり、石油や天然ガスなどの地下資源由来となります。
Lizedが提案するオイルの役目は革らしい風合いを求める感触や質感、お手入れとしての保革、そして目止めの3つになります。
アニマオイルのようなニートフットオイルは優れた浸透性を持つ動物性オイルです。その特性ゆえに、革の繊維に深く馴染みやすく、柔軟性を高める効果が期待できますが、同時に塗布した部分が色濃く変化する傾向があり、さらに革表面の水分までも一緒に引き込んでしまう可能性があります。そのため、使用にあたっては、端革や目立たない箇所で事前に効果を確認することをおすすめします。特に黒などの濃色の革に対しては、色の深みが増し、より美しい仕上がりになるため、適した選択肢と言えるでしょう。
アニマオイル+Wはエマルジョン化の効果により革への適度の浸透と銀面の潤いを得られ、感触や質感と保革に対して適しています。また、水で希釈することで濃度や浸透性を調整できるため、用途に応じた使い分けが可能です。特に床面からの塗布では、柔軟効果が得られ、革のしなやかさを高める処理としても活用できます。
プラントオイルは、Lizedが提案するオイルの中でも、染色工程における目止めシーリング効果に優れています。革の繊維に適度に浸透することで、染料の吸い込みを均一に整え、発色の安定性を高める役割を果たします。
クリームペースト
■ CreamPaste TOCO
成分:アクリル樹脂、植物性ワックス、水
柔軟性のあるアクリル樹脂と植物性ワックスが主成分の床面専用処理剤となります。
床面に対する伸びの良さと磨き艶が得られるのが特長です。
毛先に塗料が絡んで色濃くなる現象を抑えた設計になります。
■ CreamPaste GLOSS HARD
成分:ウレタン樹脂、水
ウレタントップ グロスHをクリーム状に加工をしています。
指先にごく少量を取るだけで滑らかに塗り広げることができ、従来のウレタントップと同様の防汚効果を発揮します。
乾燥後に磨くことで独特の艶感が得られます。
■ CreamPaste NON-GLOSS
成分:ウレタン樹脂、シリカ、水
ウレタン樹脂とシリカをクリーム状に加工をしています。
指先にごく少量を取るだけで滑らかに塗り広げることができ、従来のウレタントップと同様の防汚効果を発揮します。
塗り易さと塗装感が無く自然な艶感で防汚効果を兼ね揃えているのが特長です。
■ CreamPaste AGEING OIL
成分:ニートフットオイル、植物性ワックス、水
ニートフットいると植物性ワックスが主成分のオイルエマルジョンをクリーム状に加工をしています。
液状のオイルを直接塗り込むオイルアップでは色移りや仕上げへのダメージといったリスクが伴いますが、クリーム状にすることで、革への負担を抑えながら潤いを与えることが可能になりました。
特にヌメ革に使用することで防汚効果が得られ、さらに経年変化を自然に促進することにも活用できます。
クリームペーストについて
Lized製品類の従来の粘性とは異なるのがクリームペースト各種となり、指先で簡単に塗り広げられる扱いやすさが特長です。これまで水に水溶性増粘剤を反応させてエッジカバーのような高粘度から、微妙な粘度調整によってグレージングトップなどの塗料を設計してきました。クリームペーストシリーズでは異なる増粘剤を採用しています。従来の水溶性増粘剤は吸い込みを抑えて革表面に塗膜を残す意図がありましたが、クリームペースト各種ではごく少量でも革表面にスムーズに広がるよう、粘性の質そのものにこだわった設計となっています。
タンナーの基本塗装工程であるスプレー塗装とは真逆の立ち位置であるクリームペースト。床面専用剤としてTOCOの製品開発を進めていく中で、はたしてゴールは床面に艶を出すことなのか?という根本的な疑問が生まれました。その結果、強烈な艶を簡単に出すことが目的ではないという結論に至りました。革の仕上げは浸透を活かすのが重要なポイントの1つであり、スプレーやロールコーターの塗装やアイロンプレスやポリッシングなどの工程を組み合わせて塗料の良さを引き出していくのが理想的なアプローチです。クロム鞣しのソフト革のような極端に吸い込みのあるの床面に対して、指で簡単に塗り広げられる強い伸びの良さを製品開発の一つのゴールとしました。
この設計により、単に塗りやすいだけでなく、毛羽立ちの毛先に塗料が過剰に絡んで色濃くなってしまう現象を抑える効果も実現しています。
スプレー塗装は革の仕上げにおいてマストな工程です。しかし、作業環境や設備の制約により導入が難しい方がいることも理解しています。そうした声に応えるかたちで開発したのが、クリームペーストシリーズになります。GLOSS HARDはウレタントップ グロスH、NON-GLOSSはウレタントップ マット、AGEING OILはニートフットオイルと植物性ワックスをベースにそれぞれ特殊加工を施しクリーム状にしています。
GLOSS HARDとNON-GLOSSはトップコートとしてウレタントップ同様に防汚効果が得られます。またGLOSS HARDとAGEING OILは塗装後に磨くことで独特の艶感が得られます。凹凸のある革や吸い込みの多い革に対しても作業性に優れており、扱いやすさも特長です。
メタリック・パール
■ メタリックペースト
成分:メタリック顔料、ウレタン樹脂、有機溶剤、水
金属顔料とウレタン樹脂を配合しています。
皮革に限らず家電などに幅広く採用されている特殊で高耐久の金属顔料を採用しています。
レンカラーを配合してオリジナルのカラーメタリックを表現することも可能です。
■ パールペースト
成分:パール顔料、ウレタン樹脂、有機溶剤、水
パール顔料とウレタン樹脂を配合しています。
化粧品など幅広く採用されている特殊な高品質のパール顔料を採用しています。染めるコトを意識して、製品名をシルバーをホワイト、ゴールドをイエローと表現しています。
メタリックペーストは異なる細かい点での輝きが特長です。
■ メタリックコンク-20
成分:金属顔料、有機溶剤
アルミニウム顔料に有機溶剤を配合しています。
造膜性のある樹脂は配合されていないので単独での使用はできません。
メタリックコンクはNCラッカートップに配合してスプレー塗装を前提としています。
■ パールパウダー 4種
成分:パール顔料
パールペーストに配合しているパールパウダーです。
ホワイト(シルバー)、イエロー(ゴールド)、レッド(レッドブロンズ)、ブロンズの4タイプとなります。
ウレタントップやエッジカバー、NCラッカートップなどに混合して使用します。
それらに対して目安の添加量を3%です。
メタリック・パールについて
タンナーの革の仕上げに採用されているメタリック顔料とパール顔料となります。経年による退色がほとんどなく、さらに耐熱性や耐酸・耐アルカリ性にも優れているのが特長です。
メタリックペーストは高耐久のウレタン樹脂に遮蔽成と光輝制に優れたメタリック顔料を分散しています。またメタリック特有の輝きとウレタン樹脂の耐久性のバランスを重視した設計となっています。両溶性染料であるレンカラーを混ぜ合わせることでオリジナルのカラーメタリックが可能な仕様となっています。
パールペーストも同様に高耐久のウレタン樹脂と天然マイカを基材とした光沢が特徴的なパール顔料を分散させています。メタリック顔料は面で輝くのに対して、パール顔料は細かい点で輝き、透過性があるので下色あるいは下地との足し算になるのもパール顔料の特徴となります。
メタリックペーストとパールペーストは速乾タイプとなり、密着性と耐久性を兼ね揃えた設計となります。艶感を調整する場合は塗装後にウレタントップやNCラッカートップの使用を推奨しています。
メタリックペースト-20はメタリック顔料を有機溶剤に湿潤させています。溶剤性の為、NCラッカートップに分散させてスプレーします。
パールペーストに採用しているパール顔料がパールパウダーになります。ウレタントップやエッジカバー、NCラッカートップなどに分散させて使用します。ザラツキや色落ちが気になる場合は再度ウレタントップ又はNCラッカートップを塗装してください。
製品の特性上、メタリック・パール顔料は分離や沈殿が起こりますので使用前に良く振って又は棒などで良くかき混ぜて分散させてください。
以下、編集中(2025/6/15)