貸株のメリットと注意点を理解しよう!

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貸株のメリットと注意点を理解しよう!

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株式投資をしていると、「貸株サービス」という言葉を目にすることがあります。


これは、証券会社に株を“貸す”ことで、金利(貸株料)というちょっとした副収入を得られる仕組みです。

設定しておくだけで、自動的にお金が入ってくるという手軽さから、利用している投資家も増えてきました。


実際、私自身も保有する銘柄の一部は貸株に回して収益を得ています。

「どうせ保有しているなら、少しでも利益を増やしたい」というのは、投資家なら自然な感情ですよね。


しかし、貸株は「何となくお得そう」で使うと、思わぬ落とし穴にはまる可能性がある制度でもあります。


たとえば──

・株主優待や配当がもらえなかった。

・配当が「雑所得」になってしまう。

・貸した覚えがないのに勝手に貸株になっていた。

こうしたトラブルは、多くの人が経験しています。


本コンテンツでは、貸株サービスの基本的な仕組みから、メリット・デメリット、さらには見落とされがちな「担保貸株」の注意点と対処法までを解説します。


「使ってみようか迷っていた方」も、「すでに利用しているけど詳しく知らなかった方」も、一度しっかりと理解しておくことで、貸株をより安全かつ有利に活用できるようになります。



 貸株の基本

貸株(かしかぶ)とは、その名の通り自分が保有している株式を証券会社に貸し出すことで、金利収入を得られるサービスです。


証券会社は、投資家から預かった株を、機関投資家や空売りを行いたい他の投資家に貸し付けます。

その見返りとして、貸主である私たちは「貸株料(貸株金利)」という形で収入を得られます。


貸株金利は年率0.1%のものが多いですが、銘柄とタイミングにより、年1~10%になることもあります。


重要なポイントは「名義が変わる」こと

貸株に出すと、その株式の名義は証券会社に一時的に移ります(名義貸しではなく、形式上の所有者が証券会社になる)。

この点が、株主優待や配当金の扱い、税金の取り扱いに大きな影響を及ぼすため、後ほど詳しく解説します。


誰でも利用できる

貸株サービスを提供している証券会社の口座を持っていれば、基本的には誰でも利用可能です(貸株サービスの申込は必要)。

信用取引口座を開設していても貸株サービスを利用できる証券会社が多いです。


いつでもやめられる

貸株はいつでも解除可能です(ただし、即日反映されるかは証券会社による)。

銘柄ごとに貸し出す・外すを設定できるため、柔軟な運用が可能です。



貸株は非常にシンプルな制度に見えますが、実際には配当・優待・税金・リスクなど、細かな注意点があります。


次の章では、貸株のメリットと、どういう場面で使うべきかを詳しく見ていきましょう。



貸株のメリット

貸株サービスの魅力は、なんといっても“株を持っているだけで金利収入が得られる”という点です。

売却益や配当とは別に、コツコツと副収入を積み上げられるという意味で、特に長期投資家にとっては相性のよい制度です。


ここでは、貸株の主なメリットを具体的に見ていきましょう。



追加の金利収入が得られる

保有しているだけで何も生まない株に、金利がつくのが貸株の最大の魅力です。


たとえば──

年率0.1%の銘柄なら、100万円分保有で年1,000円。

年率0.4%なら、100万円分で年4,000円。

年率1.0%なら、100万円分で年1万円。


銘柄によっては想像以上に高い金利がついていることもありますが、空売りニーズが高く長期投資に向いていない株が多いので、あまり高金利をもらえるイメージは持たない方がよいでしょう。

大型株で出来高が多い銘柄は、ほとんどの銘柄は年率0.1%です。


貸株料は、月に1回入金されます。



短中期保有の銘柄でもOK

貸株は、基本的に「売却予定のない銘柄」や「しばらく寝かせておく銘柄」に向いていると言われますが、数日しか持たない場合でも、貸株を設定すれば多少の貸株料がもらえます。


証券会社によりますが、信用口座を開設してなければ(原則)、現物株の購入→自動的に貸株に入る設定にすることもできるので、少しでも貸株料を受け取りたい場合は、設定しておくとよいでしょう。



資産変動や売買の自由はそのまま

貸株中でも、株価の値動きは通常通りに資産に反映されます。

また、証券会社によりますが「貸株中でも即時に売却可能」というシステムを採用しているところがほとんどで、貸株設定により売買を制限されることはありません。




金利の仕組み

貸株の魅力は、保有している株を証券会社に貸し出すことで“貸株金利”という形の収入を得られる点にあります。


金利の仕組みと具体的な受取額のイメージを見てみましょう。


金利は「年率」で表示される

貸株金利は、証券会社の画面で年率(%)で表示されます。

たとえば、ある銘柄の貸株金利が「0.4%」と表示されていれば、1年間に0.4%分の金利が付くということです。保有している期間すべてにそのまま付くわけではなく、1日単位で日割り計算され、1か月ごとにまとめて支払われます。


金利は銘柄ごとに大きく異なる

貸株金利は一律ではありません。銘柄ごとに、

・空売りの需要(逆日歩の付きやすさ)

・流動性の高さ

・証券会社内の貸出残

などによって決まり、日々変動します。


たとえば──

人気の大型株で需給が落ち着いている → 0.1%

優待クロスで空売りの一時的な需要あり → 1.0%

空売りしたくなるような小型株 → 1.0%以上

のようなイメージです。


空売り需要が多い銘柄は金利が上がる

空売り需要が高く、売りたい人が多いほど、

→ 空売りのために株を借りたい人が増える。

→ 証券会社が株を集めたくなり、金利を高くしてでも投資家から貸してもらいたくなる。

という構図です。


貸株金利は日割り

貸株金利の表示は年率ですが、金利は1日単位でもらえて、通常は1か月に1回振り込まれます。


注意点:金利は日々変動する

昨日まで年率5%だったのに、急に0.1%に下がることもあり得ます。

証券会社によって更新頻度は異なりますが、貸株金利を定期的に見てみると面白いです。

特に、権利付き最終日の直前〜直後は金利が跳ねやすく、変動も大きいです。



貸株の注意点・リスク

貸株は、一見「ノーリスクで副収入が得られるお得な制度」に見えますが、見落とされがちなリスクやデメリットもあります。

貸株を利用する際に必ず押さえておきたいリスクを見ていきましょう。


株主優待や議決権を受け取れないことがある

貸株中の株式は、名義が証券会社に変更されているため、基本的に

・株主優待

・株主総会の議決権


などの「株主としての権利」が失われます。


対処法:「優待優先設定」をONにする

普通のネット証券では、「株主優待の権利確定日前に自動で貸株を一時解除する」という設定が可能です。

→ 優待目的で保有している銘柄は、この設定をONにしておくことで優待取得漏れのリスクを避けられます。


ただし、長期優遇が設定された優待銘柄の場合、貸株を設定することにより、長期優遇が受けられないことがあります

長期認定を受けるためには同一の株主番号が必要で、貸株をすると証券会社の名義になるので、貸株解除後に株主番号が変わることがある…と言われています。変わらないこともあるので、個々の判断が難しいです。


想像の範囲ですが、長期認定は定期的な株主番号チェックが行われており、通常は年2回(2Q, 4Q締めの権利付最終日)です。

年2回優待の場合は自動的に貸株解除される設定にすれば自分の名義に戻りますが、年1回の優待の場合は、半年後の名簿チェック時には名義が戻らず、長期認定が切れてしまうのではないかと考えています。また、年4回チェックしているところもあり、これが株主優待の説明に明記されないこともあります。


株主名簿チェック時に貸株解除していても、貸株設定→解除により株主番号が変わってしまうこともあるそうです。

長期認定の株を貸株に出すなら、最低1株や100株、1000株を残して、残りの株だけを貸株に出せばよいと思います。1株でも保有し続けていれば株主番号は変わらないので、長期認定を受けることができます(銘柄により、株主名簿チェックのタイミングで一定以上の保有株数が必要なことがあり、明言されていなくてもずっとその株数が必要なこともあり、注意です)。



配当金が「配当金相当額」になり、税制上不利になることがある

貸株中の株式は、自分の名義ではないため、配当は「配当金」ではなく「配当金相当額」として支払われます。


この違いが重要!

配当金:配当所得(申告不要や総合課税選択可)。税率は基本20.315%(源泉徴収)で完結。

配当金相当額:雑所得(総合課税のみ)。所得と合算するので高所得者には不利。

特に所得が高い人(医師・会社役員など)は、配当金相当額が雑所得として合算され、税率が大きく跳ね上がる可能性があるため、十分注意が必要です。


対処法:「配当優先設定」をONにする

優待と同じように、「配当の権利確定日前に自動で貸株を一時解除する」という設定をONにすれば、配当の権利確定前に自動的に貸株解除をしてくれます。

ただし、無配だと思われていたが、後日配当が発表された…という場合は、貸株解除されないことがあります。



証券会社が破綻した場合に株が保護されない可能性がある

通常の現物株は、証券会社が破綻しても「分別管理」により保護されます。

しかし貸株の場合は、証券会社に貸し出している=所有権が一時的に移っている状態であるため、


・破綻時に返却されない可能性がある

・投資者保護基金などの対象外となることもある

という点には注意が必要です。


可能性は極めて低いものの、「リスクゼロではない」という認識を持っておくことが重要です。

貸株を利用する証券会社の業績は、会社四季報などでチェックしておきましょう。



株を売りたいときにすぐ売れない場合がある(らしい)

証券会社によっては、貸株中の株式を売却するには一度「返却処理」が必要になることがあるらしいです。

私が使っている証券会社は貸株中でも即時売却が可能なので詳細が分かりませんが、貸株返却の処理に1営業日程度かかるケースもあると言われています。


売りたいときに売れないなら、貸株はやるべきではありません。

貸株をするなら、即時売却可能な証券会社でやりましょう。



担保貸株の注意点(特にSBI証券)

貸株サービスを利用しているつもりがなかったのに、配当が雑所得扱いになっていた。

あるいは、株主優待が届かなくなった。


こうしたトラブルの原因で多いのが「担保貸株」です。


「自分は貸株なんて設定していないのに、なぜ…?」

そんなときは、“担保貸株”が発動している可能性があります。


担保貸株とは?

担保貸株とは、投資家が保有する株式を、信用取引の担保(代用有価証券)として差し入れながら、同時に証券会社に貸し出す仕組みのことです。


つまり、「信用取引に使っていない間の株式」を“担保として差し出す”と同時に、“貸株”として証券会社が再利用できるようにする制度です。


担保貸株は、以下の2つの目的を同時に果たす仕組みです:

信用取引の担保として証券会社に預ける(代用有価証券)

証券会社がその株を機関投資家などに再貸しする(=貸株として活用)


担保貸株を利用する条件

信用取引口座を開設していること

保有株式が信用取引における代用有価証券として差し入れ可能な銘柄であること

証券会社側で「担保貸株」制度を採用していること


担保貸株の特徴

担保貸株は、基本的には通常の貸株と同じです。

証券会社の広告では、信用取引の担保(代用有価証券)として差し入れながら貸株金利を受けられるというメリットが強調されています。

しかし、担保貸株には注意点があります。



担保貸株の注意点

担保貸株は、通常の貸株よりも金利収入が低くなります。


受け取る貸株収入は、以下の2パターンがあります。


① 通常の貸株金利より低いが毎日もらえる:楽天証券など

② 通常の貸株金利と同じだが、実際に貸し出された株しか配分されない(抽選で当たった日だけもらえる):SBI証券など


SBI証券などで採用される②のパターンは、全然金利がもらえません。


しかも、SBI証券は投資家に不利で、デフォルトの貸株設定が通常の貸株でなく、担保貸株になっています。

信用口座を開設している場合、現物株を買ったら、定期的に担保貸株→通常の貸株に切り替える手続きをしないと、担保貸株を解除できません。金利収入という観点からは、担保貸株を選ぶメリットは全くありません。


そしてSBI証券の場合、現物株を買うと自動的に担保貸株に入ってしまう可能性があります。

これでは、気を付けないと優待・配当の面で損をしてしまうことがあります。


貸株口座の申込を行っていない場合は、勝手に担保貸株に入ってしまうことはないので大丈夫です。

これは、貸株申込をしたことがある方のみの注意点です。


信用口座・貸株設定をしている場合は、今一度、お持ちの証券口座の設定と貸株設定を確認しておきましょう。



まとめ

貸株サービスは、うまく活用すれば株を持っているだけで副収入が得られる便利な仕組みです。

特に中長期で保有する銘柄については、毎月の金利収入が“ちりつも”で資産形成に貢献してくれます。


しかしその一方で、

・株主優待の取りこぼし

・配当金の雑所得扱いによる税負担の増加

・証券会社の設定による意図しない担保貸株の発動

といった見えにくいデメリットも存在します。


特に、SBI証券のように担保貸株が初期設定でONになっているケースでは、知らないうちに不利な税制・優待の扱いを受けている可能性もあります。


・優待・配当を重視する銘柄には「優待・配当優先設定」を必ずONに

・長期優待を狙うなら1株だけ現物保有を残すのも有効

・証券会社によって「即時売却可否」「貸株金利の水準」が異なるので比較を

・信用口座を持っている人は、「担保貸株」が有効になっていないか必ず確認!

などの点にご留意ください。


貸株は、制度を正しく理解したうえで利用すれば非常に有用なツールです。

知らぬ間に損をすることがないよう、ぜひ一度、ご自身の証券口座の貸株設定と信用口座の設定状況を見直してみてください。



以上です。


放射線科医ふくろう


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